温井松代『大岡博の人と歌』

大岡博――その人間と短歌の魅力

温井さんが「菩提樹」を去り「濤声」を創刊したのは、師大岡博を学び直し、師が師父と仰いだ空穂を学ぶ、そのための歌誌を作りたい一心からであった。真意の必ずしも理解されなかった頃はどんなに寂しかったことだろう。また、温井さんを信じてやまぬ人たちの存在も忘れてはならぬことだろう。 (橋本喜典・帯)

〈著者選・大岡博の五首〉
・蔵ひおきしわがマント着て受験生の群れゐるホームに子は行き隠る 『渓流』
・安堵にも似るとし云はば近からむ佳き歌ひとつ選び得し後 『南麓』
・空穂先生なくば短歌(うた)なく短歌(うた)なくば我はもあらじ乏しきを世に 『童女半跏』
・たゆたひて未だ光らぬ大き月海面(うなも)を低く離るるとせず 『春の鷺』
・子が拓く一人の道を見守りて見ぬごとく来ぬ距離おきて我 『春の鷺』