鈴木りえ歌文集『笹舟の行方』

  わが生の航跡に似る一舟の水尾は真白く泡立ちて消ゆ
 まだ幼い少女だった作者が、母とともにあの日疎開先の小川に流した笹舟は、その後七十五年を経て、はるばるどこへ流れ着いただろうか。本書を読み終えて私は、そのようなことを考えてみるのである。 (谷岡亜紀・帯)

・廃線の錆びし線路に押し寄せる白きコスモス赤きコスモス
・淡紅のゆうかげぐさの木下影ひろいて夕べの涼しさに会う
・手術室の大いなる扉(ドア)は軽く開き車椅子の背に重く閉まりぬ
・病廊の自販機の緑の点滅のめげずに生きよとまたたき止まず
・幾たびも読みたる『昭和萬葉集』戦火の巻を雪に読み返す