久保田紀子歌集『合歓の木』

 歌集名に迷うことなく、ご自宅の庭の合歓の木に因んで決められたとうかがっている。言うなれば長い歳月をともに生きて来たこの木への愛しさからであろう。紀子さんには、それとなく心情を吐露した歌が多かった。写実を基調に、知的抒情をちりばめた風雅な歌集として読ませていただいた。  (山村泰彦・帯)

・大木の合歓のかたへにわれも犬も住みてほろほろ花を浴びゐる
・ふるさとの比叡に愛宕の山恋へど北アルプスの日々に親しも
・「足らぬことひとつのあるを良しよせよ」遠住む吾に母言ひましき
・祇王祇女仏の像も仄暗き庵の中に鎮まりてゐき
・長岡京の朝どり筍笹の葉の添へられ太きが送られてくる