塚越房子歌集『嶺岡山の春』

南房総の明るい伸びやかさをしっかり感受している。粘り強く歌い、鋭い批判意識を内に秘めて、暮らしを見つめる視線の明るさに翳りを与えている。房総の風土に育まれた女性のたっぷりとした情念と内に秘めた強さを教えてくれる歌集である。 田村広志・帯

・天津千軒波穏やかにいにしへゆ生活(たつき)を護る漁の船ゆく
・正しき名を「平和の少女像」と言ふことばを持たない慰安婦の像
・亡き姑の口癖を今しみじみと「人貧乏は一番困る」
・暮れ残る空に広ごるあかね雲嶺岡山の稜線に燃ゆ
・彩雲は火の鳥となりまほろばの富士を飛びたち天へと向かふ