堤節子歌集『ひたぶるに』

 作品は美しい飯能の自然を背景に粗削りとみせつつ繊細な感情の奔出が入り混じりリズミックで楽しく、息もつかせず読ませる。読者には自在にどこからでもページを開いて楽しんで頂きたいと思う。そこに堤節子短歌の真骨頂があるからである。 押切寛子・帯

・晩夏光低く射し来てあじさいの残りの一花いよいよ蒼し
・思い出は甘酸っぱくて林檎パイひそかに冬のはじまる夕べ
・極刑を受くる状(さま)なり逆さまに吊り干されたる紅(くれない)の薔薇
・おもかげも遥けくなりてふり仰ぐ空の闇より散りくるミモザ
・侵されし三半規管内耳に棲む蟬も眠れよ暁近き刻