ぐろりや会&好書会

2018/12/22

 土曜日。ぐろりや会二日目、好書会初日に向かう。あたたかな陽気でうれしい。
 ぐろりや会ではあまり買った覚えがないので、分野が違っているなとは思っていたのだが、やはり何も買えなかった。何冊か手に取ってみたものの、本の状態が悪かったり、値段が許容できる額の三倍だったりで、棚に戻してしまった。会場を何度も行き来して粘ったが、だめだった。どうにも相性が悪い。御茶ノ水から高円寺へ。
 好書会では以下のものを購入する。

 米山芳照『大正 和歌の作り方』(國華堂書店、大正6年)/函欠?、300円
 生田蝶介編『昭代一萬歌集』(立命館大学出版部、昭和5年)/200円
 今井邦子編『梛の葉歌集 第一篇』(国民婦人会、昭和8年)/値札取れていて元の値段は不明、200円
 山本嘉将『香川景樹論』(育英書院、昭和17年)/150円
 松田常憲『續長歌自叙傳』(白玉書房、昭和33年)/200円
 金原省吾『赤彦先生と金原省吾』(金原よしを、昭和45年)/200円
 小関茂研究会『歌人 小関茂——作品とその世界』(短歌新聞社、昭和52年)/函欠、100円

 最近は高円寺の方が相性が良いらしく、1350円しか使わないで済んだ。ここはいつも思うのだが、これ前も見たよ、という本が結構ある。小関茂とか金原省吾の本は前も見て、わざと残して置いたのだが、やはり誰も買わないので買う。山本嘉将の本、不要不急にもかかわらず、尊敬している著者なので買っておく。今井邦子の編著は値札が付いていなかったのだが、帳場のお姉さんが「詩集だから200円でいいですか」と言うので、「はい」と答える。歌集なのだが、まあそれは関心のない人には同じようなものなのだからよいとして、「詩集だから200円」というところ、古書業界における詩歌集の位置が如実に知られる。
 収穫は米山芳照『大正 和歌の作り方』か。これで戦前の短歌入門書のコレクションに一冊追加できたので良かった。この本、ちょっと変な本で、表紙には「吉井勇先生序歌、尾上柴舟先生詠歌、與謝野晶子先生詠歌、米山芳照著」となっているのだが、扉には「與謝野晶子女史詠歌、米山芳照先生著」と二か所異同がある。版元の方で付けたのであろう。扉の後に晶子と柴舟の歌があり、これは短冊を写真撮影したもののようだが、その後の吉井勇の序歌に至っては原稿用紙を撮影したもの。「序にかへて たまきはる命光れば歌はみちうつくしきかな吾妹子のごと 大正五年十二月 吉井勇」とあって、それは構わないが、「な」と「吾」の間に書き損じが一字あり、ぐちゃぐちゃと黒く潰してある。こんなものを序歌として載せてよいのだろうかと苦笑する。印刷が大正五年十二月二十八日で、発行が大正六年一月三日という超高速の仕上がりで、新たに書き直してもらう暇もなかったものと見える。原稿を依頼するほうも依頼されるほうも締切はなるべく守りましょうという教訓である。しかしこの双方の雑なところ、人間的で良いなと思ったりもする。
 他にも変なところがあって、一つめの序文の末尾に「露花 破戒 しるす」と署名があり、二つめの序文の署名は「黑瞳子」である。米山芳照何処へと思ったが、本文の第一章の巻頭に「米山露花著」とあって、芳照と露花が同一人物なのはわかった。しかし、破戒と黑瞳子は誰なのかと。内容は五章に分かれるが、二、三、四章と筆者の記載はなく、第五章に至って突如「黑瞳子著」などと出て来るから油断ならない。
 「黑瞳子」も米山芳照なのかと思うが、「破戒」とは誰なのだろう。ついでだが、本文は終始「和歌の作りかた」と「方」を平仮名で通しているのも、どういうものなのかと思った。
 戦前の短歌入門書の場合、著者を見れば明らかに新派、明らかに旧派、とわかるものもあるが、これなどどちらの立場か迷うところ。そういうごちゃ混ぜの入門書の大方は、ほぼ無名に近い著者が書いているのだが、それはそれでおもしろいもの。
 この本、やはり「和歌の作り方」であるし、大正六年発行なので、旧派歌人を購読層と想定して刊行したような気がする。ちなみに同年に岡田圭二『和歌の手ほどき 解説』(岡田文祥堂)という本も発行されているが、佐佐木信綱『和歌入門』、大和田建樹『歌まなび』、若山牧水『牧水歌話』、金子薫園『短歌日記』などとともに参考書の一冊に挙げられている。