土岐善麿記念公開講座特別公演「能と土岐善麿 青衣女人を観る」

2019/01/31

 目黒の十四世喜多六平太記念能楽堂(喜多能楽堂)にて、土岐善麿記念公開講座特別公演「能と土岐善麿 青衣女人を観る」に参加する。
 これは公益社団法人十四世六平太記念財団の普及事業であり、また、武蔵野大学文学部日本文学研究所土岐善麿記念公開講座特別公演でもある。善麿は武蔵野大学(旧武蔵野女子大学)文学部の初代主任教授で、同大学の能楽資料センターの設立にも顧問として尽力した。そういう縁のある講座である。
 最初に武蔵野大学同窓会むらさき会会長の落合貴代子氏のお話を聞く。落合氏もそうらしいのだが、善麿の教え子の方々から伺ったお話等の紹介があり、学生への指導態度や研究室の様子など興味深い内容だった。その後、講演があり、まず、同大学文学部長の三田誠広氏の「東大寺と廬舎那仏」という講演、その後、河路由佳さんの講演があった。十月会で一緒なので、その縁でご案内をいただいたのだった。
 河路さんは「歌人、土岐善麿の1940年代」と題してお話された。年譜と短歌の詳細な資料を準備され、1940年代を中心とした善麿の歌と能の関係についての講演で、あらためて土岐善麿の歌の良さを思った。資料に書き出された善麿の歌を眺めていると、一首が比較的長いなという印象を持つ。字余りの歌も多いのだが、平仮名も多用しているからだろう。それが彼の知的な、思想的な詠風を生かす形になっているのではないかと思った。河路さんは、世情騒然たる戦中戦後における善麿の平常心は、能の支えがあってのものではないかという見解を示され、肯くところの多いお話だった。
 講演の後に仕事があったため肝心の能「青衣女人」を観ずに退出することになってしまったが、後日伺ったところによると、能そのものも素晴らしいものだったようである。そうであろう、めったにない機会だと思うので是非観ておきたかったが残念なことをした。