趣味展

2019/03/22

 神保町に所用で出掛ける予定があったのを幸い、趣味展へ。10時過ぎに到着。実はこんなに早く行ったことはなかったのだが(平日仕事をしていれば当たり前だが)、なるほどこんなに混雑しているのかと今更ながら感じた。ご老体方の当たりもきつく、なかなか力強いことよと感慨を深める。私は歌人だから、紅旗征戎我ガ事ニ非ズの伝で、後ろの方から扶桑書房の棚など見ていた。どうせ歌集は残るのだから焦ることもない。

 佐々木信綱編『玉琴』(明治41年、春陽堂)/300円
 岡稲里歌集『朝夕』(明治43年、新潮社)/函無し、300円
 橋本敏夫編『日本山嶽短歌集』(昭和10年、交蘭社)/300円
 佐々木邦『豊分居閑談』(昭和22年、開明社)/200円
 中村武志『澤庵のしっぽ』(昭和28年、六興出版社)/300円
 尾崎孝子歌集『歴程』(昭和29年、歌壇新報社)/200円
 徳川夢声編『随筆の味』(昭和33年、春陽堂書店)/400円

 映画関係の本や雑誌が多くてあまり拾えなかったが、自分としてはそれなりに満足する。『随筆の味』は少し高かったか。佐々木邦のは戦前の『豊分居雑筆』だと思っていて、後でよく見たら戦後の「閑談」のほう。まあ、そもそも存在を知らなかったので良しとする。
 尾崎孝子(コウコと読む)はもちろん歌壇新報社社長で、戦前は「短歌新聞」の柳田新太郎の好敵手といったところ。孝子自身が「あらたま」「ポトナム」「橄欖」にいた歌人でもあるわけだが、結社では少なくとも「橄欖」「ポトナム」等の支持はあったように思う。美木行雄なども一時編集部にいたはずで、このあたり詳しい解明が待たれる。戦前戦中そして戦後の孝子及び歌壇新報社の歩みについては彼女の随筆集『萬華鏡』を参照のこと。まあ、とにかくすごく活動的な女性です。釈迢空に蛇蝎のごとく忌み嫌われた柳田と張り合わなくてはならなかったのだから、彼と同じく毀誉褒貶あったことだろう。この時期の歌壇関係の雑誌編集者は一癖も二癖もある人物が多く、特にゴシップにも力を入れた柳田や尾崎らの活動というのは、その是非についていろいろ意見はあろうが、歌壇にひとつの活気を与えたのは事実である。