温井松代『大岡博の人と歌』刊行

2019/05/01

 温井松代氏の評論集『大岡博の人と歌』を刊行した。昭和58年歌誌「濤声」を創刊された著者が、同誌に三十五年にわたって連載していた大岡博の作品研究を中心に、関連する文藻を一巻にまとめたものである。帯文には過日長逝された橋本喜典氏の一文をいただき、優しさに満ちた高雅な文で本書を飾っていただいた。ここにあらためて深い感謝の念と哀悼の意を表します。ありがとうございました。
 本書の内容は、歌人大岡博に長らく師事した著者ならではの作品鑑賞を主としている。膝下にあった者でなければ書けない、温かさと鋭さで、往時の思い出をまじえてその人間と短歌の魅力について語っている。また、著者の願いが、多くの人が大岡博の短歌に親しんでほしいということにあるのはもちろんだが、博の短歌を通して日本語の美しさや正しさ、短歌表現における人間の内面性と韻律の重要性を再認識してほしいということにもあるような気がしている。
 詩人大岡信の父として語られることの多い大岡博だが、その歌人としての矜持、歌人以前に人間としての温もりをその作品の上に見出し、さらには短歌と人間性との関わり、短歌における格調ということにも思いを致していただければ幸いである。