岡一輻歌集『能登の鳶 くるりくるり』刊行

2019/11/11

 岡一輻さんの歌集『能登の鳶 くるりくるり』を刊行した。新書房を立ち上げてから二年連続でお世話になり、ありがたく思う。岡さんは現在73歳だが、常に新しい言葉、新しい自分、新しい風景に出会えることを願い、それを求めて日々暮していらっしゃることに、いつも感銘を受けている。
 この歌集も、前歌集に引き続き、岡さんの言うところの〈日常語〉によって詠まれた短歌の作品集である。過日、御自宅近くの二俣川駅でお会いした際も、その事で談論風発したわけだが、岡さんの希望がゆるやかにでも、たしかに作品として果されてゆくことを、傍らで見守りたいと思っている。

 ・朝市の退けた通りに残ってる濡れた二つの丸い木の椅子
 ・知らないこと求めつづけて生きてけよ誰でも無知の人で逝くもの
 ・あの丘に独り住んでる人がいる黄色のうすい公孫樹とともに
 ・中学を卒業の日に発った駅さくらが空をうずめてくれた
 ・船がくる塩の匂いをふりまいて日暮れ港のひととき紅い
 ・今ごろになぜだか空に浮かんでる音もたてずに薄れてる夢

 最後の歌は、11月20日付「読売新聞」朝刊の長谷川櫂「四季」欄に紹介していただいた。短いながらも達意の文章と、歌に合わせた美しい空の写真を添えてくださり、著者ともども深謝申し上げます。