米山髙仁歌集『蒼天無常』刊行

2019/12/23

 米山髙仁氏の第三歌集『蒼天無常』を刊行した。前二巻の歌集と同様、正字体で本文を組んだ。米山氏は現在「橄欖」「不二歌道会」に所属する福島県会津若松市在住の眼科医である。
 作品表記は正字体・歴史的仮名遣で通されており、近年珍しい事かと思うが、歌の内容は、医業を通じて出会った様々な情景や御夫人はじめ身辺の親しい人々との出会いと別れ、会津地方の自然や風土を詠んだ作品が中心で、読者にも親しみやすいものである。著者の人柄もまた同じで、歌壇きっての愛妻家であり、まことに仲睦まじい御夫婦、羨ましい限りだ。その人柄から見た風景には温かな視線を感じる。いっぽう、米山氏は日本の過去に強い関心と拘りを示す方でもあり、本集に関していえば、沈鬱な哀傷の歌や雄渾な調べを持つ歌も数多い。
 第一歌集から担当させていただいた御縁で三度お世話になった。深く感謝申し上げます。帯に引いた歌以外では、

・息子亡くし十年(ととせ)經しいま妻亡くすと涙に途切れぬ電話の聲は
・比叡山の頂までのケーブルカー下に鹿ゐると指さす妻は
・大空に浮ぶ巨大な岩に住み隠者となりて生きたき時も
・笑み浮べ寝てゐる幼とりまきて皆母の顏事務も看護師も
・老いゆゑか三度鼻かむ食事時ならひとなりて苦にもならざり
・二年閒ともに歩みし萬歩計いづれの地にか去りてしまへり

などの作に、著者の日常の一部が見え、滋味の深い歌となっている。老いを詠まれた作品が増えた事には注意して見ていたが、ますますの御健詠をお祈り申し上げます。