「短歌往来」2020年8月号(特集・私の稀覯本)

2020/07/20

 「短歌往来」8月号の特集は〈私の稀覯本〉であった。この特集は私好みで、毎年やってほしいくらいである。
 23名の執筆者がそれぞれ所持している本について書いている。〈稀覯本〉といっても、「日本古書通信」などの専門誌ではないので、本当の〈稀覯本〉は少ないように思われるが(私を含めて多少言い訳めいて書いているところに愛嬌がある……稀覯本などそうそう持っているわけはないのだから……)、執筆者の多くが歌人だから歌集ばかりかと思っていたが、そうではないところが面白かった。まったく知らない本、例えば、永田和宏氏の『平塚運一版画集』、佐藤通雅氏の辻光之助著『星の世界』、田中綾氏の第一高等学校国語漢文科編纂『大震の日』、松村正直氏の石本美佐保著『メモワール・近くて遠い八〇年』、森山晴美氏の『大図解 九龍城』、晋樹隆彦氏の藤森安和詩集『15才の異常者』など、勉強にもなったし、やはり自分の趣味の偏りを感じた。その他の方々も含めて、それぞれの人生にとって大きな衝撃を受けた本、深く関わりを持つ本、強く印象に残った本なので、そのあたりが読みどころかと思う。
 拙文も掲載していただきました。編集部の皆さまありがとうございました。私は宇井無愁著『犬のたまご』にした(これも稀覯本ではない)。最近自分の書いた真面目な文章に飽いているし、取り上げたのがユーモア小説集なので、会話体で進め、落(サゲ)まで付けたのだが、ちょっとその落(サゲ)がわかりづらかったかもしれない。
 最初は岡崎清一郎詩集『暮春車上哀韻曲』(昭和13年、私家版)にしたのだった。これは本当の稀覯本で、12部作製で、うち2冊は内務省への納本分だから、実際には10部しか世の中に出回っていないはずのものである。すべて消しゴムを削って自分で印刷・製本したものだ。岡崎清一郎にはこの手の私家版詩集がいくつもあって、いずれも稀覯本である。私蔵のものは同じ栃木の詩人・高内壮介宛の献呈本で、限定12部のうち1番のもの。これについては一度書いた文章があるので、そのうちこの編集便りに掲載しておこうと思う。貧すれば鈍す、いまその詩集を売ろうとしているのだが……(笑)