内野信子『蜻蛉日記「巻末歌集」を読む――日記の外周に道綱母を尋ねて』刊行

2021/01/15

 内野信子『蜻蛉日記「巻末歌集」を読む――日記の外周に道綱母を尋ねて』を刊行した。装幀は山崎登氏にお願いした。
 著者の内野さんとは、歌集『つまくれなゐ』を上梓された時から御縁をいただき、この度、以前の『蜻蛉日記の表現論』(おうふう、2010年)以来、十年ぶりとなる研究書を刊行させていただいた。感謝申し上げます。
 私自身は古典文学にそれほど深い造詣がないのだが、『蜻蛉日記』の「巻末歌集」を一首一首、非常にわかりやすく読み解いてくれているので、初心者の方が読んでも分かりやすい文章となっている。原文、口語訳、語釈、鑑賞というふうに読み進めていただければ、より理解が深まるだろう。
 内野さん自身が活発で、とても情熱に溢れた、知的探求心の旺盛な方だが、その探究心をもって『蜻蛉日記』の外周にうかがい得る道綱母像の豊かな人生を、鮮明に描き出した力作だと思う。公私にわたる様々な出来事の渦中で、どのように日常を送り、どのような思いを抱いて生きていたのか、平安時代中期を生き抜いた一人の女性の姿を知り、現代女性の生き方にも通じるような共感を覚えた。
 古典文学を読む大きなよろこび、楽しみの一つは、当時を生きていない私たちが現代の視点からどのようにその原文を解釈していくか、という点にあると思われる。その事が内野さんの筆によって成し遂げられているのではないか、と私は思っている。